[レポート]Love’s Travel Stops社がどのようにSAP on AWSで顧客体験を向上させたか#reinvent #ENT203
データアナリティクス事業本部の鈴木です。
AWS re:Invent 2022の、セッション番号ENT203の『How Love’s Travel Stops improved customer experience with SAP on AWS』を聴講したのでレポートです。
セッションについて
登壇者
- Bob Armstrong, Senior Manager of Digital Platforms, Love's Travel Stops
- Manoj Muthukrishnan, Principal Solutions Architect, Amazon Web Services
Session level
200 - Intermediate
Session type
Breakout Session
動画
セッション概要
ドライバーに清潔で安全な休憩・給油場所を24時間提供するという継続的なミッションをサポートするため、Love’s Travel Stops社は複数のデータセンターで稼働するSAPシステムをAWS上に統合しました。
本セッションでは、セキュリティ強化・30%のコスト削減・自動フェイルオーバーによる99.99%の信頼性の実現のため、どのようにAWSを利用したかについてご紹介します。
SAPをAWSに拡張し、SAP Business Technology Platformサービスを利用して、顧客体験を変革する方法についてもご紹介します。
発表概要
このセッションは、大きく分けて、Love’s Travel Stops社でのSAP on AWSの活用状況の紹介とSAP on AWSに関する紹介の2つの内容がありました。各々の概要をご紹介できればと思います。
Love’s Travel Stops社でのSAP on AWSの活用状況の紹介
Love'sでは1年に50店舗ずつ増えるようなスピード感で事業拡大を進めています。気候変動の分野では、代替燃料の開発と普及に伴って、消費者のエネルギーニーズを満たす様々な燃料補給の選択肢を提供することに力を注いでいます。サプライチェーンについては安全性、ビジネスの最適化、利益の最適化など、様々な検討を日々続けています。
そして、技術トレンドですが日々新しく広まる精算方法への対応や様々な環境にあるテナントでそれができるようにSpaceX社の衛星インターネットを利用するなどの選択肢を模索してたりもしています。
このようにLove'sではITの使命を、安全で安定した拡張性のあるソリューションを提供し、事業のペースを加速させることと位置付けていて、AWSの利用もその加速の追求によるものが多いです。
AWSへの移行においては、データセンターから撤退したり、コスト削減を迫られらりするような緊急のニーズがあったという訳ではなく、以下のような4つの必要性がありました。
オンプレミスで運用していた際の、セキュリティやハードウェアのサポートに関する課題がまずありました。後者は特に大きなモチベーションとなりました。信頼を感じていたAWSを選択し、AWS Quick Startsを使いつつ、HA/DRを考慮した構成に、システムを全面的に移行しました。移行時にはデータベースのバージョンアップなども行いました。
信頼性を高めるため、SAPの運用は積極的に自動化を試みました。バックアップの自動化とCloudWatch Application Insight for HANAによるモニタリングを利用しました。DevOpsのツールとしては、Terraform、Ansible、Packer、そしてLambdaを使用しています。インフラとアプリケーションのオーケストレーションには、SAP Landscape Managementを使い、リフレッシュとスケールアウト・スケールインのスケジューリングに使用しています。災害復旧にはCloudEndure Disaster RecoveryとAWS Elastic Disaster Recoveryを使用しています。
私たちが必要とする支援内容とスピードアップの効果を提供してくれる最適なパートナーであると判断し、設計・構築・テスト・自動化など、プロジェクト全体を通してAWS Professional Servicesを利用しました。
結果、以下のような構成で環境を構築しました。HA戦略はマルチAZで、DR戦略はマルチリージョンです。HANAデータベースは、HANAサーバーのレプリケーションにより、ほぼリアルタイムでレプリケーションが行われるため、HA/DRの両方の観点でRPOの数字を減らすことができます。AWS Elastic Disaster Recoveryでファイルシステムのマイグレーションも行っています。
以降に際して、アプリケーションサーバーやデータベースのプラットフォームの見直しも行っています。例えば、HANA 1.0から2.0へのアップグレードやWindowsからRed Hatへの移行などです。こういった変更で生まれた余力は、高可用性や災害復旧に投資しているそうです。
過去4年間のマイルストーンとその過程で生まれた利益や学んだ教訓も紹介されました。
SAP on AWSに関する紹介
AWSは14年以上にわたってSAPワークロードをホスティングしてきた経験があり、以下はその歩みです。
様々な事業領域の数多くのお客様が、実際にAWSを信頼して、ミッションクリティカルなワークロードを実行しています。
RISE with SAP on AWSはRPOをゼロにし、短距離DRと長距離DRの両方を提供し、ミッションクリティカルなワークロードに極めて高い信頼性を提供します。パフォーマンス面では、RISE with SAPのEC2インスタンスには、より優れたパフォーマンスを提供するNitroプラットフォームが採用されています。9つのリージョンに渡りSAP Business Technology Platform(BTP)を展開しており、SAPのコアプロセスを近代化しています。加えて77社のSAPコンピテンシーパートナーを利用することができ、RISE with SAPインスタンスのマイグレーションやモダナイゼーション、トランスフォーメーションに関して支援することができます。
AWSでは、何千ものお客様がRISE with SAPやBTPサービスをAWS上で稼働させています。RISE with SAPとBTPをAWSで実行すべき最大の理由は、AWSにはBTPサービス用に9つのリージョンがあること、先週の時点で30以上のサービスがAWSのみで実行されていることです。DRは同期レプリケーションをサポートし、同じリージョンで複数AZを活用し、同期レプリケーションもサポートしています。RISE with SAP on AWSは、長距離DRもサポートしており、お客様はミッションクリティカルなSAP環境を2つの異なるリージョンに展開し、信頼性を高めることができます。グローバルネットワークに関しては、RISEとBTPの両サービスがAWS上で動作することで、接続パターンを簡素化するための単一なグローバルネットワークを用意しています。
Gartner社のようなサードパーティアナリストは、12年連続でAWSをリーダーとして認めていますし、SAPを専門とするISGも5年連続でAWSをSAP HANAインフラサービスのリーダーとして認定しています。
最近発表したSAPに特化した、純粋にSAPのために作られたAWSの機能をいくつか紹介します。例えば、AWS SDK for SAP ABAPは、ABAP開発者がSAPビジネスプロセスを拡張・変換し、300以上のAWSのネイティブサービスと統合し、言語としてABAPを使用できるようにするものです。HTTPSでペイロードを暗号化したり、SAPシステム内で定義されたSAPレベルの固有の権限を使用したりと、非常に強力なセキュリティ体制を提供することもできます。
AWSではSAP向けのイノベーションを4つの柱で分類しています。「マイグレーションの簡素化」・「SAPのワークロードを実行するためのコアインフラ」・「イノベーションとモダナイゼーション」・「管理と運用の簡素化」です。
マイグレーションの簡素化の観点
Migration Hub Orchestratorをリリースし、お客様とパートナーがSAPの移行を追跡・監視できる場所を提供しました。カスタマイズ可能なワークフローテンプレートを提供し、SAPの移行を自動化することもできます。SAPへの移行促進プログラムも大幅に改善されました。
SAPのワークロードを実行するためのコアインフラの観点
いくつかの機能をリリースしています。まずSAP certified for NetWeaver and HANA Intel Ice LakeベースのEC2インスタンスをリリースしました。X2iインスタンスでは、前世代と比較して最大50%近い性能向上が実現されています。Intelは、HANAインスタンスをベースにしています。これは純粋にHANAのために作られたもので、これらのX2iインスタンスは1~4TBの範囲にあります。また、R6i、M6i、C6iインスタンスは、メモリに最適化された汎用インスタンスとコンピューティングに最適化されたインスタンスでリリースしています。これらのインスタンスタイプは、前世代のIntel Cascade LakeやSkylakeベースのプロセスと比較して、15%以上の性能向上を実現しています。SAP NetWeaverインスタンスは、AMD MilanベースのEC2インスタンスがR6a、M6a、C6aインスタンスで稼働するAMDベースのプロセスで認証されています。また、18TBと24TBのHANAインスタンスを仮想化し、SAPのシングルノードスケールアップの認証も取得しています。AWS上の仮想化環境の主な差別化要因の1つは、当社のNitroシステム、Nitroプラットフォームを活用することです。Amazon FSx for NetAppがリリースされ、Amazon FSxでSAP HANAホストの自動フェイルオーバーをサポートするようになりました。これにより、HANAのマルチノード、HANAスケールアウトインスタンスに高可用性を提供し、スタンバイ機能によりコストを削減することができます。
イノベーションとモダナイゼーションの観点
SAP AppFlowコネクタが大幅な機能強化を行い、SAPコネクタに双方向のデータフロー機能を追加され、必要に応じてSAPに書き戻すことができるようになりました。SAP環境から増分抽出もできるようになりました。先に紹介したAWS SDK for SAP ABAPもこの観点に含まれます。
管理と運用の簡素化の観点
Launch Wizard for SAPツールを大幅に強化し、デプロイメントのスケールアップもサポートするようになりました。HANAとBW for HANAに加えて、SAP Solution Managerもサポートしました。
昨年はお客様のフィードバックに基づいて、SAP Lens for AWS Well-Architected Frameworkをリリースしました。SAPワークロードが適切にアーキテクトされていることを保証するための、実証済みの設計原則とベストプラクティスをお客様に提供するものです。SAP Lensは、AWSのSAPスペシャリストチームからのフィードバック、つまり、AWSのSAPコンピテンシーパートナーと過去14年間に実際にAWSに移行した何千ものSAP顧客から得たフィードバックに基づいて開発されています。
また、SAP HANAのためのAWS Backupのサポートをリリースすることで、さらなるイノベーションを行いました。
SAP NetWeaverとHANA向けのCloud Watch Application Insightsもリリースしました。これは、インフラレベルからOS、高可用性を設定した場合に使用するPacemakerに至るまで、スタック全体を監視し、状態を観測できるようにする単一のツールを提供します。AI/MLを活用してSAP NetWeaverのシステムメトリクスを分析し、ユーザーがほとんど介入しなくても何らかの異常を検出することができます。
SAPのクラウドへの移行を迅速に開始し、スキルギャップを埋めるため、プロフェッショナルサービス内にSAPを目的とした専用のプラクティスを用意しています。これによりクラウドとSAPの間のスキルギャップを埋め、世界トップレベルのSAP on AWSのエキスパートが、お客様が望ましいビジネス成果を達成できるよう支援します。
お客様は77社のSAPコンピテンシー・パートナーを活用することもできます。
SAP on AWSについてもっと知りたい方は以下のURLのテクニカルガイドやブログをご覧ください。
最後に
今回はre:Invent2022で行われた『How Love’s Travel Stops improved customer experience with SAP on AWS』のレポートでした。
Love’s Travel Stops社におけるSAP on AWSの活用・移行事例の紹介を通して、どのようにAWS上でSAPを活用するメリットを得られるのか理解することができました。また、後半ではこれまでのAWSをSAPの歴史を振り返りつつ、直近どのようなサービスが追加され、どのように活用できるか学ぶことができました。
AWSにSAPを移行することを検討されていて、どのような支援を受けることができるのか知りたい方や、AWSのSAP向け新機能について知りたい方はぜひセッション動画も見ていただければと思います。